令和元年分の所得税確定申告の留意点

所得税及び復興特別所得税(以下、所得税)の確定申告時期となりました。令和元年分の申告を行うに当たっての留意点を、いくつかご案内します。

 

目次

添付書類の省略

平成31年4月1日以後に提出する申告書から、次の書類の添付が不要となりました。

【添付不要となった書類】

1. 給与所得、退職所得及び公的年⾦等の源泉徴収票

2. 上場株式配当等の支払通知書

3. オープン型の証券投資信託の収益の分配の支払通知書

4. 配当等とみなされる⾦額の支払通知書

5. 特定⼝座年間取引報告書

6. 未成年者⼝座等につき契約不履⾏等事由が⽣じた場合の報告書

7. 特定割引債の償還⾦の支払通知書

8. 相続財産に係る譲渡所得の課税の特例における相続税額等を記載した書類

 

上記1.~5.の書類は、これまで電子申告を行った際に、“第三者作成書類”として特定事項の記載を行うことで、書類の保存義務はあるものの、提出は不要とされていたものです。今回の添付不要により、保存義務もなくなりました。

ただし申告書を作成するには、これらの書類が必要です。今後もこれらの書類を紛失等されないよう、ご留意ください。

 

住宅ローン控除の拡充

消費税率の引き上げに伴い、住宅借入金等特別控除(以下、住宅ローン控除)が拡充されました。具体的には、令和元年10月1日から令和2年12月31日までの居住、かつ、居住用物件に適用された消費税率が10%である場合には、控除期間が10年間から13年間へ3年間伸長され、一定の控除が受けられます。この場合、居住用物件の種類に応じた次の金額が控除限度額となります。

【伸⻑期間(11〜13年目)各年の控除限度額】

1.認定⻑期優良住宅・認定低炭素住宅の場合

次のいずれか少ない額
①年末残⾼等〔上限5,000万円〕×1%
②(住宅取得等対価の額※-消費税額〔上限 5,000万円〕)×2%÷3
2.上記1.以外の住宅の場合

次のいずれか少ない額
①年末残⾼等〔上限4,000万円〕×1%
②(住宅取得等対価の額※-消費税額〔上限 4,000万円〕)×2%÷3
(※)補助⾦及び住宅取得等資⾦贈与の額控除前

 

仮想通貨に係る措置

ビットコインなどで知られる“仮想通貨” について、次の措置が講じられました。

1.評価方法

これまで、仮想通貨の取得価額の算定には『移動平均法』を用いることを基本とし、継続適用を要件に、『総平均法』も認められていました。これが法制化され、原則として納税者が届出により選定した評価方法を用いて、取得価額を算定することとなりました。選定できる評価方法は、次の2つです。

(1)総平均法 
(2)移動平均法  

 

仮に納税者が選定の届出をしなかった場合には、(1)の総平均法が評価方法となります。(2)の移動平均法を用いたい場合には、必ず届出をしなければなりません。

 

届出には次のとおり期限がありますが、令和元年分に関しては経過措置が設けられています。具体的には、平成31年4月1日時点で仮想通貨を有している場合は、平成31年4月1日にその仮想通貨を取得したものとして、令和元年分の確定申告期限(令和2年3月16日)までに届出書の提出を行えば、令和元年分の申告から選定した評価方法が認められます。

【仮想通貨の評価方法の届出書の提出期限】

仮想通貨を新たに取得した日又は従来取得している仮想通貨と種類が異なる仮想通貨を取得した日の属する年分の確定申告期限までに提出

 

2.取得価額算定の例外

取得価額を算定する例外として、売買収入金額の100分の5相当額を取得価額とすることが認められることとなりました。

 

是正を受けやすい申告誤り

税務署から是正の連絡を受けやすい申告誤りをいくつかご紹介します。

1.配偶者や扶養親族の所得要件

特に、ご子息(ご息女)の年収合計が103万円を超えるケースにご留意ください。

2.申告漏れ

(1)ふるさと納税返礼品

ふるさと納税の返礼品は、一時所得として課税対象となります。特に、返戻率の高い自治体への高額のふるさと納税にご留意ください。

(2)保険の満期金、解約返戻金等

生命保険会社からの満期金や解約返戻金がある場合に、ご留意ください。

(3)国外財産

特に、国外に口座のある預金利子などが、申告漏れになりやすいです。

(4)還付加算金

過年分の確定申告で所得税の還付を受けた際に、利子相当分として『還付加算金』をあわせて受け取る場合があります。還付加算金は受け取った年分の雑所得として、課税対象となります。

 

 

事業者にかかる消費税の取扱い

消費税の納税義務者である場合には、原則、令和元年10月1日以後の取引について、消費税率ごとに経理をする、“区分経理”が求められています。所得税とあわせてこちらもご留意ください。なお、令和元年分の所得税及び消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)の確定申告に係る法定納期限及び口座振替日は、次のとおりです。期限内の納付あるいは振替口座の残高確認を忘れないようにしましょう。