青色事業専従者給与を引上げるときのポイント

Question
私は個人でカフェを経営しており、スタッフ数名と妻に給与を支払っています。
毎年の昇給時期である6月に、スタッフの昇給と一緒に妻の給与を引上げますが、このときの妻の給与の引上げ額をスタッフの基準よりも多くしようと思っています。税務上問題にはなりませんか?妻の給与の引上げを行うときのポイントを教えてください。
なお、私は青色申告者で、妻に対して青色事業専従者として給与を支払っています。

 

Answer
青色事業専従者への給与に関しては、一定の届出書を税務署に提出しているはずです。
その届出書には青色事業専従者に関する情報の他、スタッフ(以下、使用人)の給与等の情報が記載されています。
まずは、その届出書に記載されている青色事業専従者の昇給の基準を確認しましょう。

 

目次

1.青色事業専従者給与

個人で経営する事業の手伝いを、暮らしを共にしている配偶者や子らが行った際に、何らかのお礼をしたい、という気持ちは誰しもあると思います。これを「給与」として支払い、 事業の経費(以下、必要経費)とするには、一定の要件があります。たとえば、ご相談者のように青色申告者である場合には、“青色事業専従者給与”として認められれば、必要経費とすることができます。

この青色事業専従者給与として認められるには、次の4つの要件を全て満たす必要があります。

 

(1)⻘⾊事業専従者に⽀払われた給与であること

⻘⾊事業専従者とは、次の要件全てに該当する⼈です。

①⻘⾊申告者と生計を一にする配偶者その他の親族

…「生計を一にする」とは、一緒の財布で生活していることをいいます。ですから、同居が必須ではありません。

②その年の12月31日現在の年齢が15歳以上

③その年を通じて6ヶ月を超える期間(一定の場合は事業に従事できる期間の2分の1を超える期間)、その⻘⾊申告者の営む事業に専ら従事している

 

(2)期限内に「⻘⾊事業専従者給与に関する届出書」(以下、届出書)を納税地の所轄税務署⻑に提出していること

◇原則、必要経費とする年の3月15日までに提出します。ただし、その年の1月16日以後に、新たに事業を開始したときや、新たに専従者がいることとなったときは、これらに該当することとなった日から2ヶ月以内に提出します。

◇記載内容に変更がない限り、一度提出すれば、継続して有効となります。

◇記載内容を変更するときには、「⻘⾊事業専従者給与に関する変更届出書(以下、変更届出書)」を、“遅滞なく”提出しなければなりません。

 

(3)届出書あるいは変更届出書に記載されている⽅法により⽀払われ、かつ、記載されている⾦額の範 囲内で⽀払われたものであること

記載⾦額を超える⽀払いなど、記載内容に変更がある場合は、必ず変更届出書を提出しなければなりません。

 

(4)⻘⾊事業専従者給与の額は、労務の対価として相当であると認められる⾦額であること

過大とされる部分は、必要経費とはなりません。

 

2.届出書の記載内容を確認しましょう

ご覧いただくとお分かりのとおり、昇給の基準欄には “使用人の昇給基準と同じ”と記載されています。そのため、このまま使用人とは違う基準で引上げてしまいますと、前ページ1.(3)に抵触することとなり、問題が生じます。

そもそもこの届出書に記載されているとおりでしたら使用人の昇給基準と同じように引上げるはずです。それが今回、多くしようと思われた理由は、何でしょうか?

 

3.異なる理由は何ですか?

届出書に記載がある奥様の「仕事の内容・従事の程度」によれば、毎日8時間接客業務を行っているようです。たとえば、これに現金出納帳等への記帳業務が加わる、というような場合でしたら、仕事の内容や従事する時間が増えるわけですから、使用人と異なる引上げとなっても問題はないでしょう。

ただしこのような仕事の内容等に変動があった場合は、届出書の記載内容が変更することとなるため、変更届出書を“遅滞なく”提出しなければなりません。

なお、前ページ1.(4)にあるとおり、青色事業専従者給与の額は、“労務の対価として相当であると認められる金額であること”が要件となっています。身内だからと好き勝手に引上げてよい、というものではありません。また引上げる際には、事業主であるご相談者の所得とのバランスや、資金繰り等も考慮に入れるようにしましょう。

 

このように、青色事業専従者へ支払う給与については、注意すべきポイントがいくつかあります。給与の変更をお考えの際には、あらかじめ当事務所へご相談ください。