「令和2年度税制改正大綱」のポイント

令和元年12月20日に閣議決定された「令和2年度税制改正の大綱」より、主な改正項目をピックアップして、ご案内します。

なお、本情報は、令和2年1月30日現在財務省その他省庁のサイトで公表されている資料を基に作成しております。ご利用の際にはご注意ください。

 

目次

個人所得課税

○NISA制度の見直し・延長

所得税・個人住民税 減税

🔹 一般NISA2階建ての新制度に衣替えし、5年延長
2階:上場株式・公募株式投資信託等年間の投資上限102万円
1階:つみたて NISAと同じ年間の投資上限20万円
原則、2階の非課税枠を利用するには、1階の積立投資の利用が要件

🔹 つみたてNISA5年延長(令和24年12月31日まで)

🔹 ジュニアNISAは延長せず、令和5年12月31日で終了

図の出典:金融庁「令和2 年度税制改正について-税制改正大綱における主要項目-」P.3 https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/zeikaitaiko01.pdf

 

○低未利用地等の長期譲渡所得の特別控除の創設

所得税・個人住民税 減税

🔹 個人が保有する低額な土地等を譲渡※した場合に
譲渡価額500万円以下、かつ、都市計画区域内にある一定の低未利用地で、低未利用であること及び買主が利用意向を有することについて、市区町村が確認をしたものに限る

🔹 長期譲渡所得から100万円を控除

🔹 改正土地基本法の施行日又は令和2年7月1日のいずれか遅い日から令和4年12月31日までの譲渡に適用

 

○国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例の創設

所得税・個人住民税 増税

🔸 国外中古建物からの不動産所得がある場合で、国外不動産所得の損失の金額があるときは、その損失額のうち、その国外中古建物の減価償却費相当額は、生じなかったものとみなす

🔸 令和3年1月1日以後の不動産所得について適用

 

○未婚ひとり親に対する措置と、寡婦(夫)控除の見直し

所得税・個人住民税 増税 減税

🔸 婚姻歴の有無による不公平を解消するため、
1.未婚のひとり親(婚姻をしていない者)に寡婦(夫)控除を適用
2.住民票の続柄に「夫(未届)」「妻(未届)」の記載がある場合は、寡婦(夫)控除の対象外に

🔹 男性のひとり親と女性のひとり親の間の不公平を解消するため、
1.寡婦控除は、寡夫控除と同じ所得制限(所得500万円以下(年収678万円以下))に
2.子ありの寡夫の控除額(所得税27万円・個人住民税26万円)を、子ありの寡婦と同額(所得税35万円・個人住民税30万円)に

🔸令和2年分以後の所得税に適用(住民税は令和3年度分以後)

資産課税

○所有者不明の土地等への対応

固定資産税 増税

所有者不明の土地又は家屋について、所有者情報の把握や課税公平性の確保のため、

🔸 現に所有している者(相続人等)の申告の制度化
・登記簿上の所有者が死亡し、相続登記がされるまでの間に、現に所有している者(相続人等)に対し、市町村の条例により、氏名・住所等必要な事項を申告させることができることとする
条例施行日以後に現に所有している者であることを知った者について適用

🔸 使用者を所有者とみなす制度の拡大
・調査を尽くしてもなお所有者が一人も明らかとならない場合、事前通知の上、使用者を所有者とみなして固定資産課税台帳に登録し、固定資産税を課すことができることとする
令和3 年度分以後の固定資産税について適用

 

○医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置の延長

相続税・贈与税 減税

🔹 医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度等の適用期限を3年延長

 

制度の概要︓持分あり医療法⼈が認定医療法⼈として持分なし医療法⼈へ移⾏した場合に、受けられる次の優遇措置

 

① 相続税の納税猶予・免除(出資者が死亡したことによる、相続⼈への相続税課税)

② 出資者間の贈与税の納税猶予・免除(出資者の持分放棄による、他の出資者への贈与税課税)

③ 医療法⼈への贈与税の納税猶予・免除(出資者の持分放棄による、認定医療法⼈への贈与税課税)

 

 

法人課税・国際課税

○オープンイノベーション促進税制の創設

法人税・法人住民税・事業税 減税

預貯金等を活用し、スタートアップへの新たな資金供給を促進すべく、

🔹 国内の事業会社やCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)が行う、創業10 年未満・未上場のベンチャー企業に対する1億円(中小企業は1,000万円)以上の出資について、25%の所得控除

🔹 但し、出資者は、出資先のベンチャー企業の株式を5年間保有

🔹 令和4年3月31日まで

 

○連結納税制度の見直し

法人税 増税 減税

🔹 グループ内で損益通算できる基本的枠組みは維持しつつ、親会社、完全子会社それぞれが申告・納税 を行うグループ通算制度

🔸 令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用(連結納税からの移行に関する経過措置あり)

🔹 グループ加入時の時価評価課税や繰越欠損金の切捨ての対象を縮小

🔸 一方で、グループ経営の実態に即した税制とするために、研究開発税制、外国税額控除等の取扱いや、既存の連結納税グループの親会社の繰越欠損金の取扱いは維持

図の出典:経済産業省「令和2 年度(2020 年度)経済産業関係 税制改正について」P.16・P.18 https://www.meti.go.jp/main/zeisei/zeisei_fy2020/zeisei_k/pdf/zeiseikaisei.pdf

 

○中小法人の交際費課税の特例措置の延長

法人税・法人住民税・事業税  減税

🔹 中小法人について、定額控除限度額(年800万円)までの交際費等を全額損金算入できる特例措置の適用期限を2年間延長(令和4年3月31日まで)

 

図の出典:経済産業省「令和2 年度(2020 年度)経済産業関係 税制改正について」P.32 https://www.meti.go.jp/main/zeisei/zeisei_fy2020/zeisei_k/pdf/zeiseikaisei.pdf

 

○中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例措置の延長

所得税・法人税・個人住民税・法人住民税・事業税  減税

中小企業者等が30万円未満の減価償却資産を取得した場合に、合計年300万円までを限度に、即時償却(全額損金算入)できる特例措置について、

🔹 適用対象者から、連結納税制度適用事業者と従業員500 超の法人を除外した上で、

🔹 適用期限を2年間延長(令和4年3月31日まで)

 

図の出典:経済産業省「令和2 年度(2020 年度)経済産業関係 税制改正について」P.31 https://www.meti.go.jp/main/zeisei/zeisei_fy2020/zeisei_k/pdf/zeiseikaisei.pdf

 

 

消費課税

○消費税の申告期限の延長制度の創設

消費税・地方消費税

企業の事務負担を軽減するため、

🔹 法人税同様、消費税の申告期限も 1 ヶ月延長を可能とする特例を創設

🔸 令和 3 年 3 月 31 日以後に終了する事業年度の末日の属する課税期間から適用

○居住用賃貸建物の仕入税額控除の見直し

消費税  増税

不動産投資における消費税還付スキームによる節税対策の封じ込めとして、

🔸 居住用賃貸建物(住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物で、高額特定資産に該当するもの)については、仕入税額控除制度の対象外とする

🔸 令和2年10月1日以後の居住用賃貸建物の仕入れについて適用

🔸 経過措置あり
…令和2年3月31日までに締結した契約に基づいて、令和2年10月1日以後に居住用賃貸建物の仕入れを行った場合には、従前通り、仕入税額控除制度を適用

図の出典:経済産業省「令和2 年度(2020 年度)経済産業関係 税制改正について」P.21 https://www.meti.go.jp/main/zeisei/zeisei_fy2020/zeisei_k/pdf/zeiseikaisei.pdf

 

○貸付け用途が明らかでない場合の課税の見直し

消費税  減税

🔹 住宅の貸付けに係る契約において、貸付けに係る用途が明らかにされていない場合であっても、状況等から人の居住の用に供することが明らかな貸付けについては消費税を非課税とする

🔹 令和2年4月1日以後に行われる貸付けについて適用

 

納税環境整備

○納税地の異動があった場合の振替納税手続の簡素化

所得税・消費税(地方消費税)

振替納税している個人が、転居等で納税地が他の税務署に変わった場合、

🔹 異動届出書等に、「異動後も従前の金融機関の口座から振替納税を行う」旨を記載したときは、異動後の所轄税務署長に対してする申告等について、引き続き振替納税を行うことを可能とする

🔸 令和3年1月1 日以後に提出する納税地の異動届出書等より実施

○電子帳簿等保存制度の見直し

所得税・法人税・消費税等

🔸 電子取引を行った場合の電磁的記録の保存方法の範囲に、次の方法を追加
1. 発行者のタイムスタンプが付された電磁的記録を受領した場合において、その 電磁的記録を保存する方法
2. 電磁的記録について訂正又は削除を行った事実及び内容を確認することが できるシステム(訂正又は削除を行うことができないシステムを含む。)において、その電磁的記録の授受及び保存を行う方法

🔹 令和 2 年 10 月 1 日より施行

図の出典:経済産業省「令和2 年度(2020 年度)経済産業関係 税制改正について」P.22 https://www.meti.go.jp/main/zeisei/zeisei_fy2020/zeisei_k/pdf/zeiseikaisei.pdf

 

その他の改正

○主な特例措置の適用期限延長

法人税・所得税・登録免許税・印紙税・固定資産税・不動産取得税・相続税・贈与税等  増税 減税

🔹 特定の資産の買換えの場合等の課税の特例について、対象資産の見直しを行った上、適用期限を3年延長(過疎地域に係る措置及び危険密集市街地に係る措置は、令和3年3月31日まで)

🔸 以下の適用期限を2年延長
1. 特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例
2. 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等
3. 特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等

🔹 優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例について、対象資産の見直しを行った上、その適用期限を3年延長

🔸 以下の登記における登録免許税の税率の軽減措置を2年延長
1. 住宅用家屋の所有権の保存登記、移転登記、住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記
2. 特定認定長期優良住宅・認定低炭素住宅の所有権保存登記
3. 特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権移転登記
4. 認定経営力向上計画に基づき行う登記

🔹 不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例措置の適用期限を2年延長

🔸 以下に係る固定資産税の税額の減額措置の適用期限を2年延長
1. 新築住宅
2. 新築の認定長期優良住宅
3. 耐震改修を行った住宅
4. バリアフリー改修を行った住宅
5. 省エネ改修を行った住宅

🔹 不動産取得税について、以下の特例措置の適用期限を2年延長
1. 新築住宅を宅地建物土地取引業者等が取得したものとみなす日を住宅新築の日から1年(本則ヶ月)を経過した日に緩和する特例措置
2. 新築住宅特例適用住宅用土地に係る不動産取得税の減額措置(床面積の2倍(200㎡限度)相当額等の減額)における、土地取得後の住宅新築までの経過年数要件を緩和する特例措置
3. 新築の認定長期優良住宅に係る不動産取得税の課税標準の特例措置

🔸 再生可能エネルギー発電設備に係る固定資産税の課税標準の特例措置を2年延長(出力5,000KW以上の水力発電設備の課税標準割合の見直しあり)

 

参考:財務省「令和 2 年度税制改正の大綱」 https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2020/20191220taikou.pdf

金融庁「令和 2 年度税制改正について-税制改正大綱における主要項目-」  https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/zeikaitaiko01.pdf

経済産業省「令和 2 年度(2020 年度)経済産業関係 税制改正について」 https://www.meti.go.jp/main/zeisei/zeisei_fy2020/zeisei_k/pdf/zeiseikaisei.pdf

厚生労働省「令和 2 年度  税制改正の概要(厚生労働省関係)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000579030.pdf

国土交通省「令和 2 年度国土交通省税制改正概要」 http://www.mlit.go.jp/page/content/001320178.pdf