相続税の納税が必要では無くても申告が必要なケース

記事監修

税理士・中小企業診断士 小口 亮平

慶應義塾大学法学部卒。ITストラテジスト、freee認定アドバイザー。法律会計事務所での実務経験を活かし、資産税申告や事業承継、クラウド会計導入などITと税務の両面から経営を支援。

相続が発生した場合、遺産の額が一定の基準を超えると相続税を支払うことになります。

今回は相続税の納税が必要では無くても申告が必要なケースについて解説します。

 

相続税が発生する条件とは?

相続税は、亡くなった方から財産を受け継いだ際に、その財産の価値に対して課される税金です。

相続税には基礎控除額が定められています。

基礎控除額は以下の計算で算出することができます。

 

■3000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

 

たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人である場合、基礎控除額は3000万円 +(600万円 × 3人)= 4800万円となります。

相続した財産の総額が、この基礎控除額を下回っている場合には、原則として相続税の納税も、税務署への申告も必要ありません。

財産には、現金や預貯金だけでなく、不動産、株式などが含まれます。

一方で、借金や未払金などのマイナスの財産は、プラスの財産から差し引くことができます。

 

納税が必要なくても相続税申告が必要なとき

相続財産が基礎控除額を超えていても、一定の特例や控除を適用することによって、最終的な納税額が0円になることがあります。

具体的なケースについてそれぞれ確認していきましょう。

 

相続税の配偶者控除を利用した場合

相続税の配偶者控除は、被相続人の配偶者が取得した財産について、1億6000万円、または配偶者の法定相続分のいずれか多い金額までは、相続税がかからないという制度です。

たとえば、相続財産の総額が1億円の場合、配偶者がそのすべてを相続すると、相続税支払いがなくなります。

ただし、配偶者控除を適用するためには、必ず期限内に相続税の申告を行わなければなりません。

申告書に、この控除を受けたい旨を記載し、遺産分割協議書などの関係書類を添付して税務署に提出することで、初めて認められる権利です。

もし「納税額がゼロになるから」と判断して申告を怠ってしまうと、この控除が認められず、基礎控除額を超えた部分に対して通常の税率で課税されてしまいます。

後から申告しようとしても、期限を過ぎている場合は認められないこともあるため、期限内での正確な手続きが重要となります。

 

小規模宅地等の特例を利用した場合

小規模宅地等の特例は、亡くなった方が住んでいた土地や、事業を営んでいた土地を相続人が引き継ぐ場合に、その土地の評価額を最大で80パーセント減額できる制度です。

たとえば、都心部の自宅の土地が1億円と評価される場合でも、この特例を適用すれば評価額を2000万円まで下げることができます。

この大幅な減額によって、相続財産の総額が基礎控除額以下になり、結果として納税が不要になるケースは珍しくありません。

しかし、この小規模宅地等の特例は期限内の申告が適用の条件となっています。

申告をしなければ、土地は本来の評価額である1億円で計算されることになり、多額の相続税が発生してしまいます。

したがって、土地を相続して評価額を下げたい場合には、納税の有無にかかわらず申告の手続きは欠かせないものとなります。

 

相続税申告を税理士に相談するメリット

相続税の申告を税理士に相談するメリットは、主に次のようなものがあります。

 

煩雑な手続きを任せられる

相続税を税理士に相談するメリットとして煩雑な手続きを任せられる点が挙げられます。

相続税の申告には、多くの公的書類の収集や、複雑な財産評価が必要となります。

不動産の場合、単純に面積に単価を掛けるだけでなく、その土地の形状、接している道路の状況、法規制などを細かく反映させて評価額を算出しなければなりません。

また、非上場株式の評価や、名義預金の判定なども、専門知識がなければ適切に行うことは困難です。

税理士に依頼すれば、これらの煩雑な作業をすべて任せることができます。

書類の収集段階からサポートを受け、正確な財産目録を作成してもらうことで、申告漏れなどのミスを防ぐことができます。

 

税務調査のリスクを下げられる

相続税の申告を行うと、後日、税務署による税務調査が行われることがあります。

税務調査では、申告内容に誤りがないか、隠された財産がないかなどが厳しくチェックされます。

もし申告漏れが指摘されると、本来の税金に加えて過少申告加算税や延滞税といった重いペナルティが課されることになります。

税理士が作成した申告書は、法的な根拠に基づいた正確な計算が行われているため、税務調査の対象になる確率を下げることが期待できます。

また、税理士が書面添付制度という仕組みを利用して、申告書の正しさを証明する書面を添えて提出することで、さらに信頼性が高まります。

これは税理士に依頼する大きなメリットといえるでしょう。

 

まとめ

今回は相続税の納税が必要なくても申告が必要となるケースについて解説しました。

相続税は遺産額が多かったり、遺産の種類が多いと複雑になる可能性があります。

特例などの適用を検討している方は税理士に相談することを検討してください。