相続時精算課税とは?メリットとデメリットについて解説
税理士・中小企業診断士 小口 亮平
慶應義塾大学法学部卒。ITストラテジスト、freee認定アドバイザー。法律会計事務所での実務経験を活かし、資産税申告や事業承継、クラウド会計導入などITと税務の両面から経営を支援。
生前贈与を検討する際、多くの方が選択肢に含めるのが相続時精算課税制度です。
本記事では、相続時精算課税の基本的な仕組みから、早期の財産移転や値上がり対策といった具体的なメリット、そして利用前に知っておくべきデメリットについて解説します。
相続時精算課税とは
相続時精算課税とは、原則として60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫に対し、財産を贈与する際に選択できる制度です。
最大2500万円までは贈与税がかからず、それを超えた分については一律20%の税率で課税されます。
この制度を利用して贈与した財産は、将来の相続時に持ち戻して計算し、すでに支払った贈与税がある場合は相続税額から差し引きます。
2024年の税制改正により、相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除が創設されました。 この枠内であれば、相続時に持ち戻す必要がなく、少額の贈与を非課税で継続できるようになり、活用の幅が大きく広がっています。
相続時精算課税のメリット
相続時精算課税を利用した場合の主なメリットを以下で確認していきましょう。
メリット①早期に財産を移転できる
一般的な贈与手段である暦年贈与では、年間110万円の基礎控除を超えた贈与に対して贈与税が課されます。
この贈与税では累進課税制が取られており、贈与額が上がるほど高い税率が適用されるため、大きな資産の移転には長い時間がかかります。
相続時精算課税を活用すれば、2500万円という大きな非課税枠を使い、一気にまとまった資金や不動産を贈与できます。
財産の早期移転のメリットは、贈与を受けた子や孫が、受け取った資産を早い段階から運用に回せることにあります。
たとえば、将来的な成長が見込まれる株式や、配当を生み出す株式そのものを一括で贈与した場合、贈与成立後に発生する配当金や将来の値上がり益は、すべて受贈者である子や孫のものとなります。
早い段階で株式を移転しておけば、その後の配当の蓄積や株価の上昇分は将来の相続税の課税対象から外れるため、家族全体の資産を守る効果が高まります。
メリット②将来の値上がり対策になる
相続時に持ち戻して計算する際、財産の価値は、贈与時の価格で固定されるというルールがあります。
たとえば、将来的な値上がりが予想される甲府駅周辺の再開発予定地の不動産や、成長が見込まれる株式などを価格が低いうちに贈与しておけば、将来の相続税負担を抑える効果が高まります。
メリット③超過分も20%の贈与税率で贈与できる
非課税枠の2500万円を超えた場合でも、贈与税率は一律で20%に設定されています。
通常の暦年贈与では、贈与額が大きくなると贈与税率は最大55%まで上がります。
高額な財産を1度に贈与したい場合、20%という固定税率は、通常の贈与税率と比較して大幅な負担軽減につながります。
相続時精算課税のデメリット
相続時精算課税制度にはメリットがある一方、次のようなデメリットもあります。
デメリット①暦年贈与に戻せない
1度相続時精算課税を選択し、届出書を提出すると、その受贈者への贈与については、2度と暦年贈与に戻すことはできません。
将来的に気が変わっても変更が効かないため、長期的な視点でのシミュレーションを行った上で制度の選択を行う必要があります。
ただし、長男へは相続時精算課税、次男ヘは暦年贈与といったように、受贈者ごとに使い分けることは可能です。
デメリット②将来値下がりしても加算額は下がらない
相続時精算課税を利用した場合、相続時に持ち戻される際の価格は、贈与時の評価額に固定されています。
もし贈与した財産が将来値下がりしてしまったとしても、相続税の計算には、贈与時の高い価格が用いられます。
価格変動の激しい資産を贈与する場合には、慎重な判断が求められます。
デメリット③贈与した宅地は小規模宅地等の特例の対象外となる
不動産の相続において強力な節税効果を持つ小規模宅地等の特例は、あくまで相続によって取得した土地が対象です。
生前に相続時精算課税を使って贈与してしまった土地については、相続時に相続財産として持ち戻されるとしても、特例を適用できません。
自宅の土地など、特例で大きく減税できるはずの資産を早まって贈与してしまうと、トータルの税負担がかえって増えてしまう可能性があるため、不動産の贈与には特に注意が必要です。
まとめ
相続時精算課税は、2500万円の非課税枠や年間110万円の基礎控除を利用して、次世代への資産移転を後押しする制度です。
特に値上がりが期待できる資産の移転や、早期の資金援助には極めて有効な制度と言えます。
ただし、暦年贈与への変更はできないことや、小規模宅地等の特例の適用制限などのデメリットを把握した上での利用が求められます。
山梨県内や甲府市で、贈与税・相続税のシミュレーションをご希望の方は、ぜひ一度専門の税理士へご相談ください。
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