年末調整後の繰越超過額
目次
freee人事労務と申告freeeを連携して年末調整や源泉所得税の納付を行っている事業者様は多くいらっしゃるかと思います。これらの連携機能は非常に便利ですが、年末調整で還付金(超過税額)が発生し、かつ、税理士報酬などの源泉所得税を納付する場合に、思わぬ落とし穴があります。
この仕様を理解していないと、気づかぬうちに納付税額が過小となり、後の税務調査で指摘されるリスクも考えられます。本記事では、その具体的な仕組みと、必ず実施すべき対策について解説します。
なぜ問題が起こるのか?データ連携の仕組み
問題の根本は、申告freeeでの手入力情報が、freee人事労務に反映されないという点にあります。具体的な流れを見ていきましょう。
Step 1: freee人事労務で年末調整完了
従業員の年末調整計算を行い、還付すべき税額(年調超過税額)が確定します。
Step 2: 申告freeeで徴収高計算書を作成
freee人事労務の計算結果が申告freeeに連携されます。ここで、**税理士や司法書士などへの報酬にかかる源泉所得税額を「手入力」**で追加します。申告freeeは、年末調整による超過税額と、手入力した税理士報酬等の税額を合算して、最終的な納付額を正しく計算します。
【注意点】データが人事労務に戻らない
申告freeeで手入力した税理士報酬等の税額データは、freee人事労務側にはフィードバックされません。そのため、freee人事労務の画面上では、税理士報酬等の税額が反映されていない状態、つまり「年末調整による超過税額がそのまま繰り越される」かのような表示になってしまいます。
具体的なリスク:翌年の納付額が過小になる可能性
このデータの不一致が、翌年の徴収高計算書作成時に大きな問題を引き起こします。特に、源泉所得税の納期の特例を利用している事業者は注意が必要です。
具体例で見るリスク
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年末調整の結果、freee人事労務上で 10万円 の超過税額が発生。
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申告freeeで、2万円 の税理士報酬にかかる源泉所得税を手入力。
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実際の納付書では、10万円と2万円が相殺され、繰り越されるべき超過税額は 8万円 となります。(もし税理士報酬が10万円以上なら、超過額は解消され、別途納付が発生します)
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しかし、freee人事労務上には、相殺される前の 10万円 が超過額としてデータが残っています。
この状態で翌年7月の納期の特例の徴収高計算書をfreee人事労務で作成すると、本来8万円(あるいは0円)で計算すべき「前回からの繰越超過額」が、10万円のまま引き継がれてしまいます。
その結果、本来納めるべき税額よりも過小に計算された納付書を作成・提出してしまうリスクがあるのです。
【重要】必ず実施すべき対策
このリスクを回避するためには、以下の手動での確認と修正作業が不可欠です。徴収高計算書を作成する際は、必ず以下の手順を踏んでください。
対策1:前回の徴収高計算書の控えを確認する
freee人事労務で次の期間の徴収高計算書を作成する前に、必ず前回申告freeeで作成・提出した徴収高計算書の控えを確認します。
対策2:繰越超過額が解消済みか確認する
前回の徴収高計算書で、「年末調整による超過税額」が税理士報酬などの税額と相殺された結果、実際に繰り越される超過税額はいくらになっているか(または、超過額が解消されて0円になっているか)を正確に把握します。
対策3:freee人事労務の金額を手入力で修正する
freee人事労務の徴収高計算書の作成画面を開きます。システムが自動で表示している「前回からの繰越超過額」を、手順2で確認した正しい金額に手入力で修正します。(相殺されて残額がない場合は「0」と入力します)
このひと手間を加えることで、納付額の計算ミスを防ぎ、正確な申告と納税を行うことができます。
まとめ
freeeのシステム間連携は業務効率を大幅に向上させますが、全てのデータが双方向に完全連携するわけではありません。特に申告freeeでの手入力項目は、連携元であるfreee人事労務には反映されないという仕様を正しく理解しておくことが重要です。
年末調整後の徴収高計算書作成時には、必ず前回の申告内容と突合し、手動での確認・修正を徹底するようにしましょう。