貸してる土地・借りてる土地の相続税のキホン

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貸してる土地・借りてる土地の相続税、どうなる?わかりやすく解説!

「親が人に土地を貸しているんだけど、相続の時ってどうなるの?」「うちは逆に、人の土地を借りて家を建てているんだけど…」

相続に関するお悩みの中でも、土地の貸し借り(専門用語では「借地」や「底地」といいます)が絡むケースは、特に複雑で分かりにくいと感じる方が多いのではないでしょうか。私たち山梨県甲府市にお住まいの方々にとっても、親から子へ、あるいは事業用として土地の貸し借りが行われているケースは少なくありません。

この記事では、一見難解に思える「貸している土地」や「借りている土地」の相続税評価について、基本的な考え方や注意点を、一般の納税者の皆様にも分かりやすく解説していきます。土地評価のポイントを押さえて、いざという時に慌てないようにしましょう。

なぜ土地の貸し借りは相続税評価が複雑なの?

ご自身の土地にご自身の家を建てて住んでいる場合(これを「自用地」といいます)は、比較的シンプルに土地評価が行われます。しかし、土地を誰かに貸していたり、逆に誰かから借りていたりすると、その土地の権利関係が複雑になるため、相続税の評価もそれに合わせて変わってきます。

  • 土地を貸している場合(「底地」や「貸宅地」といいます): あなたが土地の所有者(大家さん)で、その土地を誰か(借地人さん)に貸し、借地人さんがその土地の上に建物を建てているようなケースです。この場合、あなたは土地の所有権は持っていますが、自由に使えるわけではありません。借地人さんの権利(借地権)があるため、その分だけ土地の価値が調整されることがあります。

  • 土地を借りている場合(「借地権」といいます): あなたが誰か(地主さん)から土地を借りて、その土地の上に自分の家やお店を建てているケースです。この場合、土地そのものはあなたの所有物ではありませんが、「その土地を使用する権利(借地権)」は価値のある財産として相続税の対象になります。

このように、土地の利用状況や権利関係によって、相続税評価の方法や評価額が変わってくるのです。特に山梨県内では、昔からの土地の貸し借り関係が続いている場合や、親子間、あるいはご自身の会社との間で土地の利用関係がある場合など、様々なケースが見られます。

「貸している土地」(底地・貸宅地)の評価ポイント

あなたが土地の所有者で、その土地を誰かに貸している場合、その土地は相続税の計算上「貸宅地(かしたくち)」として評価されることがあります。

ポイントは、**「貸宅地は、自分で自由に使っている土地(自用地)よりも評価額が低くなるのが一般的」**という点です。

なぜなら、土地を貸しているということは、借主の権利(借地権)が存在するため、所有者であってもその土地を自由に使ったり、売却したりすることが難しくなるからです。その制約分を考慮して、評価額が減額されるのです。

ただし、誰に、どのような条件で貸しているかによって、評価方法は細かく変わってきます。例えば、

  • 全くの第三者に通常の地代で貸している場合

  • 自分の子供や親族に低い地代で貸している場合

  • 自分が経営する会社(同族会社)に土地を使わせている場合

など、状況によって評価の仕方が異なり、注意が必要です。特に親子間や同族会社との土地の貸し借りの場合、「土地の無償返還に関する届出書」という書類を税務署に提出しているかどうかなど、専門的な確認事項も出てきます。甲府市のような都市部でも、こうしたケースは散見されます。

「借りている土地」(借地権)の評価ポイント

あなたが誰かの土地を借りて、そこに建物を建てて利用している場合、その「土地を借りる権利(借地権)」も立派な財産として相続税の対象となります。

借地権の評価は、その土地が面している道路の路線価(道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額)や、その地域ごとに定められた借地権割合などをもとに行われます。路線価は国税庁のホームページで確認できますが、実際の評価は複雑な場合もあります。

借地権の評価で注意したいのは、

  • 地代をきちんと支払っているか

  • どのような契約内容になっているか

といった点です。例えば、地代が極端に安かったり、権利金などの一時金を支払っていなかったりする場合には、借地権の評価額に影響が出ることがあります。山梨県内でも、古くからの借地関係では契約内容が曖昧なケースも見受けられるため、確認が必要です。

複数の土地や人が関わる場合:一体利用の考え方

さて、ここからが少し専門的になりますが、分かりやすく説明します。 例えば、次のようなケースを想像してみてください。

  • 登場人物と土地・建物

    • 親:土地Aを所有しています。

    • 子:土地Bを所有しています。(土地Aと土地Bは隣り合っています)

    • 店舗:この土地Aと土地Bの両方にまたがって、一つの店舗(例えば、親子で経営するお店)が建っています。店舗の建物は子が所有しているとしましょう。

このような場合、相続税土地評価は少し複雑になります。

  • お店(建物)を使っている側(この例では子)から見ると… 子は、店舗全体を一体として利用しています。そのため、親の土地Aと自分の土地Bを合わせた範囲全体が「お店の敷地」として重要になります。つまり、「利用している単位」で土地の権利(この場合は主に借地権や使用貸借権)を見ることになります。親の土地Aについては、子が借りている(または無償で使わせてもらっている)形になります。

  • 土地の持ち主側(この例では親)から見ると… 親にとっては「土地A」が自分の財産です。この土地Aは、子の店舗の敷地の一部として貸している(または使わせている)状態です。つまり、「所有している単位」で土地(この場合は貸宅地や使用貸借の目的となっている宅地)を見ることになります。

このように、同じ土地(この例では土地A)でも、「誰の立場で見るか(借りている子か、貸している親か)」、そして**「何の権利を評価するか(子が建物を使う権利か、親が土地を所有する権利か)」**によって、評価の範囲(どこまでを一つの土地として見るか)や評価方法の考え方が変わってくることがあるのです。

先ほどの例で、もし親が亡くなって土地Aを子が相続する場合、土地Aは「子が店舗の敷地の一部として利用している土地」として評価されます(貸宅地や使用貸借の評価)。一方、もし子が亡くなって、店舗の建物や土地Aを借りる権利を相続する場合、その権利は「土地Aと土地Bを一体として利用している店舗の敷地を利用する権利(借地権や使用借権)」として評価される、といった具合です。

これは非常に簡略化した説明ですが、実際の相続では、複数の土地にまたがって大きな事業(例えばホテルなど)が営まれていたり、土地の所有者と建物の所有者が異なったり、さらにその建物が会社名義だったりと、権利関係が複雑に絡み合っているケースがあります。山梨県甲府市の地元の企業や旧家などでは、こうした状況も珍しくありません。

山梨県で気をつけるべき「貸し借り土地」の相続

山梨県では、ご先祖から受け継いだ土地を大切に守り、活用されてきた歴史があります。そのため、

  • 親子間で土地を貸し借りし、子が家を建てている

  • 親族が経営する会社に土地を貸して、事業所や工場として使ってもらっている

  • 古くからの地主さんから土地を借りて、長年住み続けている

といったケースは、甲府市内やその近郊を含め、県内各地で見られます。 こうした土地の貸し借りが絡む相続では、まずその契約内容(賃貸借契約書があるか、地代のやり取りはどうなっているかなど)をしっかり確認することが第一歩です。そして、その状況に応じた適切な土地評価を行うことが、適正な相続税申告に繋がります。

安易に「うちは大丈夫だろう」と自己判断せず、専門家のアドバイスを受けることが重要です。

まとめ:複雑な土地の権利関係は専門家にご相談を

土地の貸し借りが絡む相続税の問題は、権利関係が複雑なため、ご自身だけで判断するのは非常に難しい分野です。特に、土地評価相続税額に直結する重要なポイントであり、評価方法一つで納税額が大きく変わることもあります。

私たち相続税特化型税理士事務所では、山梨県及び甲府市の地域事情に精通した税理士が、こうした複雑な土地の権利関係や評価についても、皆様の状況を丁寧にお伺いし、最適なアドバイスとサポートを提供いたします。

「うちの土地の貸し借りはどうなるんだろう?」と少しでも不安に思われたら、どうぞお気軽にご相談ください。早めの準備が、円満な相続と適切な納税への第一歩です。