5年後に注意! 免税事業者との取引は消費税が控除できなくなる

Question
当社(年商3億円)は、当社社長と会長が所有する建物を賃借して事務所として利用しており、各人へ賃借料(年600万円ずつ)を支払っています。
社長も会長も消費税は免税事業者ですが、当社は当該賃借料を“課税仕入れ”として、消費税を計算する上で仕入税額として控除(以下、仕入税額控除)しています。
消費税率が10%へ引上げられた後も、引き続き仕入税額控除をすることはできますか?

 

Answer
令和元年10月1日から消費税率が8%から10%へ引上げられても、令和5年9月30日までの間は、免税事業者からの“課税仕入れ”について、現行と同様、仕入税額控除はできます。
一方、令和5年10月1日以降は、一定の場合を除き、免税事業者からの“課税仕入れ”について、仕入税額控除はできないこととなります。

 

目次

1.仕入税額控除の方式の改正

令和元年10月1日より、消費税の税率が合計8%から10%へと引上げられるのと同時に、軽減税率制度が開始することで、標準税率10%と軽減税率8%との複数税率となります。

複数税率となることで、納めるべき消費税を計算する上では、税率ごとに区分して経理(以下、区分経理)する必要があります。そこで、この区分経理に対応するよう、これまで仕入税額控除の要件であった帳簿や請求書等の記載と保存(請求書等保存方式)が、次の期間に応じてそれぞれの方式へと改正されました。

2.令和5年9月30日までは現行と同様

区分記載請求書等保存方式の下では、現行と同様、免税事業者からの課税仕入れであっても、区分記載請求書等保存方式の要件を具備していれば、引き続き仕入税額控除はできます。

 

3.令和5年10月1日からは原則対象外

適格請求書等保存方式(以下、インボイス制度)は、例外を除き、適格請求書等の保存が仕入税額控除の要件となります。“適格請求書等”を発行できるのは、登録を受けた適格請求書発行事業者だけです。この登録は消費税の課税事業者しか受けられません。つまり、免税事業者は“適格請求書等”を発行できず、結果として取引の相手先は仕入税額控除ができないこととなります。

 

4.例外と経過措置

ただし、例外と経過措置があります。

(1)例外

適格請求書等の交付を受けることが困難な取引は、帳簿のみの保存で仕入税額控除ができます。例えば、次のような取引です。

 

① 適格請求書の交付義務が免除される一定の取引
(例.3万円未満の公共交通機関の切符・自動販売機からの商品購入等)

② 不特定多数者へ販売等する事業者が交付する適格簡易請求書の記載事項(取引年月⽇を除く)を満たす入場券等が、使用の際に回収される取引

③ 古物営業、質屋⼜は宅地建物取引業を営む事業者が適格請求書発⾏事業者でない者から、 古物、質物⼜は建物を当該事業者の棚卸資産として取得する取引

④ 適格請求書発⾏事業者でない者から再⽣資源、⼜は再⽣部品を棚卸資産として購入する取引

⑤ 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費、宿泊費、⽇当及び通勤手当等に係る課税仕入れ

 

(2)経過措置

また、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れであっても、次の①の要件をすべて満たす場合には、②の期間に応じてそれぞれの割合に相当する分を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています。

 

①要件

(※)帳簿には、①課税仕入れの相手⽅の⽒名⼜は名称、②取引年月⽇、③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)、④対価の額の記載が必要です。

②期間と割合

 

5.ご相談のケース

ご相談のケースは先述4.(1)に該当しないため、インボイス制度開始後は、原則、仕入税額控除ができません。ただし、4.(2)①の要件をすべて満たすことで、令和11年9月30日までの間、一定割合は仕入税額控除ができます。

一方、令和11年10月1日以降も仕入税額控除をするには、適格請求書を発行するために、賃貸人が課税事業者を選択して適格請求書発行事業者の登録を受けるしかありません。賃貸契約や不動産の所有関係の見直しなどを含めた対策が必要となるでしょう。

不動産の所有関係の見直しなど、多額の資金移動が発生するような場合には時間を要します。これを機に免税事業者との取引を洗い出し、影響額の算定とともに、対策を検討しましょう。