基本的に全ての事業者に関係があります! 軽減税率制度への対応準備は進んでいますか?

Question
当社は年商2億円の機械の部品製造業です。
消費税の納税義務者ですが、消費税の軽減税率の対象となる飲食料品等(以下、 軽減税率対象品目)を販売していませんので、当社は軽減税率制度への対応が不要と考えています。
問題はありませんか?

 

Answer
軽減税率対象品目を販売していないとしても、仕入や経費に 軽減税率対象品目があれば、「区分経理」を行うとともに、当該「区分経理」により作成した帳簿や請求書等の保存をしなければ、消費税を計算する上で、売上税額から仕入税額を控除(以下、仕入税額控除)することはできません。軽減税率制度への対応は必要といえるでしょう。

 

 

目次

1.軽減税率制度の概要

令和元年10月1日より、消費税の税率が合計8%から10%へと引上げられるのと同時に、軽減税率制度が開始します。この軽減税率制度の開始により、大きく次の3点が変わります。

 

(1)複数税率の開始

軽減税率制度が開始されると、次の軽減税率対象品目について、軽減税率8%が適用されます。

<軽減税率対象品目>

  • 食品表示法に規定する食品(酒税法に規定する酒類、外食やケータリング等を除く。)
  • 週2回以上発⾏の定期購読契約に基づく新聞

 

つまり、標準税率10%とこの軽減税率8%との複数税率となります。

 

(2)税額計算

複数税率となることで、税率ごとに区分して税額を計算します。

(3)帳簿及び請求書等の要件の改正

(2)の税額計算を行うためには、税率ごとに区分して経理(以下、区分経理)する必要があります。そこで、この区分経理に対応するよう、これまで仕入税額控除の要件であった帳簿や請求書等の記載と保存(請求書等保存方式)が、次の期間に応じてそれぞれの方式へと改正されました。

参考までに、現行の請求書等保存方式と区分記載請求書等保存方式との違いを次に示します。

※1 現⾏と同様、3万円未満の少額取引や自動販売機からの購入など請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由があるときは、請求書等の保存は求められない。
※2 ⑥⑦の記載がないときは、交付を受けた側が追記可能。

 

2.軽減税率制度への対応

御社のケースで考えてみましょう。

 

(1)日々の取引で軽減税率対象か否かの確認

御社は軽減税率対象品目を販売しませんが、 次のような支出がある場合には、軽減税率対象品目の経費が発生することとなるため、区分経理が求められます。そのため日々の取引で、軽減税率対象か否かの確認が必要となります。

 

<軽減税率の対象となる例>

  • 会議⽤の仕出し弁当や飲料⽔代
  • 従業員への福利厚⽣⽤茶菓⼦代
  • 取引先へ差し入れする飲食料品代
  • 社内図書⽤の新聞代(一定の定期購読契約に基づくもの)

 

(2)区分経理を行い、帳簿等を保存

区分経理が発生する場合には、軽減税率対象部分について、これまでの帳簿処理に加え、軽減税率の対象品目である旨を記載しなければなりません。

また、原則として区分経理をした帳簿や、 必要事項が記載された請求書等の保存が必要となります。

 

(3)税率ごとに区分して税額計算

税率ごとに区分して税額を計算します。

 

なお、消費税の免税事業者であっても、軽減税率対象品目を販売している場合には、購入者から区分記載請求書等の発行を求められる可能性があります。「軽減税率対象品目を販売しない」あるいは「消費税は納税しない」といって、軽減税率制度への対応を全く準備しなくていいわけではありません。軽減税率対象品目と対応すべき内容を確認しましょう。